静岡タオル「きなりのまま」誕生秘話
2022年2月に創業102年目を迎える、静岡県磐田市の加藤タオル株式会社。
創業以来ずっとOEM(他社ブランドの製品を製造すること)専門でタオルを織られてきて、高い専門知識や技術を持たれています。
昨今の劇的な市場の変化の中で、次の100年を見据えた展開を模索されていました。
2021年夏、ぬくもり工房本店にお越しくださった際に、「このタオルに遠州綿紬を使って、商品化できないでしょうか。」と、1枚のタオルを見せてくださいました。
綿糸そのものの自然な色合い、ふわっとなめらかでやさしい質感のタオル。
「時間をかけてつくった自慢のタオルなんです。」
タオルにひと手間加える事で、付加価値をつけて商品化したいと、当時はお考えだったようです。
そこからタオルに対するモノづくりの想いを伺いました。
静岡県内、しかも遠州地域で、高い技術をもったタオル工場がある事を知らず、「このまま商品として出した方が良い。」と当社スタッフ皆がそう感じました。
そこから代表 大高が自社ブランディングの必要性のお話をし、昨年末に加藤タオル様 初のオリジナルタオル「きなりのまま」が誕生しました。
今回は加藤タオル株式会社 専務取締役の加藤亮様、加藤惠子様に「きなりのまま」の誕生秘話を伺いました。
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始まりは10年前。
OEM商品の生産が中心の弊社工場で、自社オリジナルタオルがまだ全くない時、現場の職人さんたちと試行錯誤、問屋さんに売り込むための商品を作ろうと、空いた時間を使って色々模索していました。
この時は、ふんわりやわらかいタオルを作ることを目的としていました。
そこで、国産綿糸にこだわり糸密度や糸の種類を変えたりとあれこれ試し織りをして、今の「わたあめ(の様な質感の生地)」ができました。
それ以外は、当時は没作品でした。
商品にはならないけど、捨てるにはもったいないから、自宅で使う用にしていました。
作り手として、生糸で織ったら、白く晒すか染める加工をして、商品になると思っていましたから、未完成なタオルでした。
肌触りはいいけど、あまり水を吸わないような印象もありました(当時の商品は、わずかに糸糊がついていたため、そう感じました)。
1ヶ月ほど使い続けると肌に馴染んで、いつの間にか、洗顔後は必ずそのタオルを手に取るようになりました。
小さい頃にクタっとなったぬいぐるみを手放せなくなるような感覚です。
「誰かと共有したい。」そう思い、友人にプレゼントしました。
2ヶ月程たった頃に友人から、「こないだもらったタオルすごくよかったから買いたい。」と連絡をもらいました。
だけど、すでに試作品は無く設計書もありませんでした。
工場の方では機械が増え生産数も上がっていたので、また再度試作品を作る余裕はありませんでした
それからずっと、私の中で忘れられないタオルとして頭の片隅にありました。
今回、コロナ禍の影響を受け、生産量が半減したことで時間も機械も空いてしまったので、何度も設計し試作し、生地をもう一度作ることができました。
当時よりも吸水性を上げ、こしのある生地に仕上げました。
晒して白いタオルにしようか、カラー染めをしようか悩んでいましたが、ちょうど子供たちの宿題でSDGsについて調べる課題やボランティアの取り組みを知り、だったらこのまま、“きなりのまま”でいこう。
ヘム(タオル両側の縫製部分)のところに好きな生地を当てたらかわいいし、種類もたくさんできるのではと、実は10年前にヘムに「遠州綿紬」を縫い合わせて使っていたことを思い出し、半ば飛び込みでアポをとり会いに行きました。
地場産業の「遠州綿紬」を様々な形で商品化し、会社を成長させてきたぬくもり工房さんなら、きっと同じ遠州産の良質なタオルに興味を持って頂けるのではないかと思っていました。
使っていただいて、このままのタオルで販売しましょうと言って頂き、「きなりのまま」のタオルで商品化することになりました。
そこからの展開は、目まぐるしく、パッケージデザイン、タグデザインを株式会社55634さんに依頼。HP作成、商品コンセプトの打ち出しなど、たくさんの方々に御支援、ご助力頂いて「きなりのまま」が誕生しました。
たくさんの愛情を、たっぷり注いで生まれたタオルです。
「きなりのまま」を皆様どうぞ可愛がってあげてください。
きっと皆様の心に寄り添うタオルになります。
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